自我、自由競争、個人主義など、私たちが完全な「個」として生きているかのごとく錯覚させる言葉は、この世に掃いて捨てるほど存在します。
しかし、その前提となっている意識の独立性は、実は、はなはだ不完全なものです。
意識は水辺に浮かぶ藻のように、水面下からの力に絶えず干渉されて揺れ動いています。
干渉が軽いときなら、ある程度は独立的、自律的に振る舞うことができます。
しかし干渉の強さがあるラインを超えた途端に不完全さがあらわになり、さらに強まると束縛、翻弄、支配された状態になってしまいます。
私たちが信じて疑わない個や意識の独立性、自律性は、極めて貧弱なものに過ぎないのです。
そうならしめている水面下の力を、私は「衝動エネルギー」と呼んでいます。
衝動エネルギーが生じる源は、意識の下部にあたる無意識というエリアです。
ここから湧き上がる力が、無意識の〝見えざる手〟として「個」に影響を及ぼしているのです。